
ピロリ菌とは、胃の粘膜にすみつく細菌です。
近年、胃の病気、とりわけ胃潰瘍の発生に、このピロリ菌という細菌が深く関わっていることがわかってきました。
ピロリ菌の感染者は、戦前・戦後の衛生状態の悪い時代に生まれた、現在50〜70歳代に多く、60%以上の人が感染しているといわれています。一方、若い世代の感染率は、低くなっています。
ピロリ菌は、すみついた胃の粘膜を、傷つけます。
そのため、ピロリ菌がすみつくと、胃の粘膜に慢性的な炎症がおこります。
胃の粘膜は、だんだん萎縮して薄くなります。これを萎縮性胃炎といいます。
萎縮性胃炎は、ピロリ菌に感染していれば、誰にでもおきますが、病気というよりも老化現象、いわば粘膜の肌荒れのようなものと理解されています。
つまり、萎縮性胃炎があっても、ほとんどの人は深刻な病気にならずに、ピロリ菌と共存しているといえます。
このほかピロリ菌は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃の粘膜にリンパ腫が発生する胃MALTリンパ腫の原因になることがわかっています。
そのほか胃のポリープや胃がんとの関連性も疑われていて、現在その研究がすすめられています。
ピロリ菌の除去には、2種類の抗菌薬にプロントンポンプ阻害薬を加えた、合計3種類の薬を併用するピロリ菌除去治療がおこなわれます。
これらの薬を1日2回、1週間継続して服用します。
4週間後に再検査をおこない、除菌できたかどうかを確認します。
ピロリ菌除菌治療をおこなうと、約3割の人に、下痢、軟便、味覚異常などがおこることがあります。
これらの副作用は、ピロリ菌除去治療が終了すれば治まります。
また、除菌治療によって、胃の働きが正常に戻ってくると、胃酸の分泌量が増加して、逆流性食道炎が起こることもあります。
ピロリ菌除菌治療が、望ましいとされる人は、萎縮性胃炎がある場合や、早期の胃がんを内視鏡下粘膜切除術によって治療したあとです。
この場合、ピロリ菌除菌治療を行うと、胃がんや胃潰瘍などの発生や再発を防止できることが、ある程度わかっています。
なお、健康保険の対象となるのは、現在、胃潰瘍や十二指腸潰瘍と診断された人で、ピロリ菌の感染が確認された場合に限られます。
ピロリ菌の感染の検査には、内視鏡検査、尿素呼気テストがおこなわれます。
また、血液や尿を採取して、ピロリ菌に対抗してつくられる抗体の有無を調べる抗体検査や、便を採取し、便にピロリ菌の一部が含まれているかを調べる便中抗原検査などの方法もあります。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍があり、ピロリ菌の感染がわかった場合は、除菌治療が勧められます。
萎縮性胃炎で粘膜が薄くなると、粘膜の傷ついた部分を修復する力が弱まり、胃液の影響を強く受けるようになります。
このような状態が続くと、粘膜の組織が破壊されてえぐられたような状態になり、胃潰瘍になることもあります。
胃潰瘍の人では、約80%の人からピロリ菌が検出されています。
しかし、ピロリ菌に感染しても必ず胃潰瘍になるわけではありません。
ピロリ菌の感染者で実際に胃潰瘍になる人はわずか2〜3%に過ぎません。
こうしたことから、胃潰瘍の発症には、ピロリ菌よりもむしろストレスなどの環境要因の影響が大きいと考えられています。
ピロリ菌にとって、胃の中は、とても居心地もよい環境です。
ですから、いつまでも居座っています。
そのため、いったん胃潰瘍になると、再発を繰り返すことがよくあります。
胃潰瘍を繰り返すよな場合は、ピロリ菌の除菌治療が効果的です。ピロリ菌の除菌によって、大半の人の潰瘍が再発しないようになってきています。

